先日の日経新聞で戦後初めて固定金利よりも変動金利で借り入れする人が増えたというニュースが発表されました。
変動金利が56%、約6割の人が変動金利で住宅ローンを組んでいることになります。
バブル崩壊の1993年後は変動金利が8%を超えていた時代だったのが、今や0.4%台と信じられません。
ネット銀行の金利が安すぎるので、今後もこの流れが続くと思われます。
しかし、変動金利を選ぶ方は、ネット銀行の金利や不動産屋に言われるがままに、変動金利を選んでいる人ばかりですが、変動金利のリスクを理解しているのでしょうか?
今回は金利の安さだけのありきたりな情報ではなく、変動金利のローン残高の減り具合や繰り上げ返済を行うタイミングや、5年後の金利予想・リスク対策などについて解説していきます。
今回の記事では、固定金利・変動金利の支払いシミュレーションを比較していきながら、変動金利のメリット・リスクを解説していきます。
金利が低い・高いだけでなく実際にシミュレーションをすることで繰り上げ返済の計画を立てることが事前にできます。
Contents
5年ルール・125%ルールはまやかし。変動金利の本当のリスク
上記では変動金利の圧倒的な安さをご紹介しましたが、一番のリスクは金利上昇による利息未払金が発生・返済が35年で終わらないというリスクです。
変動金利の元利均等型であれば、5年間の返済額が変わらない5年ルールと、5年間の間に金利が上昇しても支払額の1.25倍までしか返済額が上がらない125%ルールがあるから大丈夫です!という不動産屋がおりますが・・・
これも無責任な話です。
5年ルール・125%ルールはあくまでも応急処置みたいなもので、返済の根本的な解決になっておらず、後回しの政策にしかありません。(金利が上がらなければいいのですが・・)
もし5年間の間に毎回金利が上がり、5年ごとに毎回1.25倍の支払額にしても、35年間で返済が間に合わなくなった場合どうなるかご存知でしょうか?
35年後も返済期限が伸びると思っている方・・・危ないです。
35年後の最後の支払日にすべての元金が一括請求されます。
もしここで払えなければ、物件に設定している抵当権が発動して家が競売にかけられて銀行は資金回収をします。
極端な話1円でも払えなければ、銀行は容赦なく抵当権行使をしてきます。
元金均等を選んでしまうと5年ルール・125%ルールが使えなくなるので要注意!
→住宅ローンの返済方法に実は2種類!?【元利均等返済】と【元金均等返済】を元プロがわかりやすく解説。
住宅ローンの変動金利は今後5年間で金利はどれだけ上昇する可能性がある?過去の事例から予想
変動金利の上昇リスクを語るのであれば、必ず見なければならない指数が短期プライムレート【短プラ】です。
短期プライムレートが上昇すれば、当然変動金利はあがります。
短期プライムレートは日銀が我々の生活や物価などをみて、短期プライムレートの上昇・下落を決めてります。
この短期プライムレートは平成21年(2009年)の1.475%から全く変わっておりません。
短期プライムレートにプラス1%したのがメガバンクの変動金利の店頭金利ですから、下記の画像をみてもずっと2.475%とということがわかります。
もし5年間短期プライムレートが全く動かなければ、変動金利が上がることはありません。
ただ政府のほうで2020年までに物価指数を2%上昇させるという政策があります。
バブル以外に過去に物価が上がったのがH17年~H20年(2008年)です。
ミニバブルのおかげで不動産の価格もかなり跳ね上がり、ミニバブル時に物価指数が2.1%上がったので、金利も当然上がりました。
短期プライムレートも1.625%から最大2.125%上がったので、2.375%だった変動金利も2.875%まで上がりました。
金利は景気が良くなると金利が上昇し、物価も上がります。よって金利上昇するかのポイントは消費者物価指数で決まります。
バブル崩壊後の1993年(平成5年)ごろまでに遡ります。2008(平成20)年ごろが、ちょうど物価上昇率2.1%という水準です。
その期間の変動金利は0.5%(2.375%→2.875%)しか上昇しておりません。
出典:住宅ローンの教科書(加藤孝一著)
よって今騒がれている物価が上がるから金利が2%以上上がる!固定に変えるべきというのはまずで暴論なんですよね。
現に平成30年7月現在も短期プライムレートが全く動いておりません。
一応変動金利が過去最低で流石にこれ以上は下がらないと思っております。
マイナス金利の影響もあって金融機関がつぶれてしまうので・・・
すると政府の物価指数が2023年頃までに達成されると見込んでも、過去の事例を見る限り0.2%~0.5%までであれば変動金利は上がると予想します。
→変動金利は固定金利より変動していない?仕組みとカラクリを元プロが解説します。
変動金利の金利上昇リスク対策は住宅ローン残高を減らすしかない。
変動金利の金利上昇リスクを抑える方法は1つしかありません。
繰り上げ返済による、元金を減らすことです。
上記の表の0.457%から仮に返済5年目に1%まで金利が上昇した場合、月々の支払いが103,076円から111,800円まで上がってしまいます。
もしここで35年の固定金利と変動金利の差額150万円を繰り上げ返済した後に金利が1%になったらどうなるでしょうか?
返済60回目で34,759,638円までになっておりますから、150万円を引いて33,259,638円です。約3,326万を残り30年で1%の金利で計算します。
すると繰り上げ返済前は、111,800円まで増えてしまったのが106,977円まで下げることができます。
当初の支払額が103,076円ですから、金利が0.5%以上上がっても150万円を繰り上げ返済すれば月々たったの3,000円のUPで済みます。
金利が上がっても、元金が少なくなっていれば、利息もその分減ります。
金利上昇リスクを恐れている人こそ、金利の安さを生かして貯金し、繰り上げ返済することが金利上昇リスクの回避策といえます。
5年後が怖いので安易な固定金利はNG!5年間変動金利と35年固定金利の住宅ローンの差額はいくら?
まず変動金利の最大のメリットはなんといっても圧倒的な金利の低さになります。
ネット銀行で8大疾病が付いている【住信SBI】のH30年7月現在の金利0.457%と、住友銀行の35年固定金利1.76%で比較検討してみます。(当初5年は金利が変わらないものとします。)
ココに注意
固定金利でフラット35で比較する方がおりますが、フラット35の固定金利で比較していい人は、諸経費以外に物件価格の頭金として1割出せる人のみです。
ネットの情報ではすぐにフラットと比べてしまうサイトが多いのですが、すべての人に当てはまるわけではありませんので要注意。
フルローンで借り入れする場合は、物件価格の1割が3%弱の変動金利で借り入れすることから、フラット35の9割融資の1.3%台の金利で比較するのが間違ってます。
都市銀行の35年固定金利で比較検討したほうがわかりやすいです。
返済回数 | ローン残高 | 返済額 | 元金 | 利息 |
1 | 40,000,000 | 103,076 | 87,842 | 15,233 |
2 | 39,912,158 | 103,076 | 87,876 | 15,200 |
3 | 39,824,282 | 103,076 | 87,909 | 15,116 |
中略 | ||||
58 | 34,939,212 | 103,076 | 89,770 | 13,306 |
59 | 34,849,442 | 103,076 | 89,804 | 13,272 |
60(5年) | 34,759,638 | 103,076 | 89,838 | 13,238 |
6,184,549(総支払額) | 5,330,200(元金) | 854,349(利息) |
年利が0.457%と圧倒的な金利の安さから、利息が5年間で100万円以下です。( 854,349円)
さらに注目すべきなのは5年間で530万円も元金が減っております。
一方で固定金利を見てみましょう。
返済回数 | ローン残高 | 返済額 | 元金 | 利息 |
1 | 40,000,000 | 127,632 | 68,965 | 58,667 |
2 | 39,931,035 | 127,632 | 69,066 | 58,566 |
3 | 39,861,969 | 127,632 | 69,168 | 58,464 |
中略 | ||||
58 | 35,903,128 | 127,632 | 74,974 | 52,654 |
59 | 35,828,154 | 127,632 | 75,084 | 52,548 |
60(5年) | 35,753,070 | 127,632 | 75,194 | 52,438 |
7,657,906(総支払額) | 4,322,124(元金) | 3,335,782(利息) |
変動金利の金利上昇リスクがない代償として、1か月目の金利による利息が58,000円も超えております。
一方の変動金利は1.6万円以下です。この時点で差額の4.2万もリスクを負うことになります。
5年間で約770万円の支払いの内、430万円が元金、利息が約340万円です。
変動金利と比べると、固定金利は支払っている額は150万円も多く払っているのに対して、100万円もローンの減りが少ないです。
つまり合計すると250万円分固定金利のほうが高いということになります。
単純に固定金利と変動金利の利息差【340万-90万円】=250万円分ということです。
結構デカいですよね?
まずは金利が変わらないという前提条件はあるものの、5年間で250万円も固定金利のほうが高いということを前提に、固定金利と変動金利を比較してみてはいかがでしょうか?
250万円がもったいないということであれば、変動を選ぶべきだし、
逆に250万円で5年分の安心が買えるのであれば、住宅ローン固定金利のメリットと銀行員が絶対に教えないデメリット5選を参考に固定金利を選択することになります。
まとめ:繰り上げ返済を計画的にできる人は5年先の事を考えるよりも変動金利を選ぼう
ココがポイント
☑変動金利のメリットは圧倒的な金利の安さ!ネット銀行の金利と都市銀行の35年固定を5年間の支払いを比較すると、その差なんと250万も差が出る
☑変動金利の最大のリスクは、金利上昇により未払い利息のリスク!35年の最後まで払えなかったら元金を一括請求され、抵当権による家が没収される場合がある。
5年ルール・125%ルールは支払いの後回しにしか過ぎない制度
☑5年後の変動金利は物価指数2%達成を見込んでいる政府によって、金利が高くなっても0.5%上昇までだと予想。
☑金利上昇リスクを回避するのは繰り上げ返済を行うことが原則!
金利0.5%上昇しても、150万円繰り上げ返済を行えば月々の支払額が金利UP前と3,000円しか変わらなくなる。
変動金利についてメリット・リスク対策・5年後の金利上昇リスクをご紹介させていただきましたがいかがでしょうか?
下記の記事で固定金利のメリット・デメリットをご紹介しておりますので、良かったら比較してみて下さい。
エクセルで返済シミュレーションを作るのに3時間以上かかったのは内緒です(笑)
住宅ローンの変動金利と固定金利のどっちが得?FPが3つの視点で解説
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