住宅ローンの中には、夫婦二人それぞれが、住宅ローンの残債を借入れするペアローンという物が存在します。
ペアローンの組む人の主な理由はこちらの3つです。
ペアローンを組む主な理由
☑ローンの借入額を増やしたいから。
☑奥さんの分の住宅ローン控除が利用できる。
☑夫婦それぞれが不動産の持分を持ちたいから。
ペアローンは借入額を増やすために利用するならまだしも、夫婦でそれぞれが購入不動産の持分を持ちたいという安易な考えがマズイ。
ペアローンで返済していたけど、収入の割合が変わってきた・離婚する可能性が出てきたなど悪い条件が出てきた場合に、安易にペアローンを一本化してしまうと、購入不動産の持分を持っていることで贈与税が発生するリスクがあるからです。
今回は、ペアローンを借り換えして一本化した際の贈与税のリスク・贈与税を回避するための2つの方法をご紹介させて頂きます。
Contents
ペアローンを一本化する3つのメリット
奥さんの収入が無くなっても、旦那だけのローンにすることで、亡くなった時に借金が0になる
ペアローンで夫婦それぞれで組んでいた場合、夫婦のどちらかが亡くなった場合は、ペアローンの内の1つのローンの残債しか0円になりません。
多くのペアローンを組んでいる奥様は、当初借入時は正社員として働いていたが、生活スタイルが変わり、片方の収入が無いor減った場合、ご主人が実態は住宅ローンの全額を払っているケースが殆どです。
仮にご主人が亡くなってしまった場合、ペアローンだと旦那の負担分であるペアローンの残債は団体信用生命保険で消えますが、奥さんの残債部分は残ったままになってしまいます。
収入が無い状態なのに、ペアローンの支払いは現実厳しい。⇒結果家を売るか、生命保険で一括返済するしかありません。
そこで、奥様の収入が減った段階でペアローンを旦那名義へ一本化をしてしまえば、旦那が亡くなったときに、住宅ローンの残債は0円になりますので、残された家族に住宅ローンの負担を残さずに済みます。
奥さんの収入が無くなったら、住宅ローン控除がフル活用できない。旦那だけにすれば、控除額が増える。
住宅ローンを組んだ当初10年は、毎年ローン残債の1%までの所得税+住民税を還付してくれる住宅ローン控除ですが、住民税と所得税を納めていない人には、税金が還付されることはありません。
収入が無い奥様は、連帯債務でローンの残債はあるのに、所得税+住民税を納めていない事でローン控除を受けることが出来ないのです。
仮に、3,000万の残債があり、旦那が所得税+住民税で30万円を納めていたケースがあったとします。(奥さん無収入)
ペアローンで旦那2,000万と、奥さん1,000万円で組んでいた場合は、旦那が受けられる住宅ローン控除は2,000万円の1%で20万円のみしか還付されません。
ペアローンを一本化し、3,000万円にすれば、3,000万の1%で30万が還付され、ペアローンに比べて10万円も税金が戻ってくるのです。
借入れ当初は、奥さんが正社員で働いてくれたけど、住宅ローン控除を受けられる10年間の間に正社員を辞めて専業主婦になるって方は、ペアローンでは無く途中で一本化した方が税金的にも得になります。
借り換え時にも審査が有り、審査が通らなければローンの一本化は出来ません。
離婚時に借り換えをすれば、奥さんの連帯債務・連帯保証が消える(収入合算はNG)
日本の夫婦の3組の内1組が離婚すると言われております。
ペアローンは離婚したからと言って、借金が0円になるわけではありません。家から出て行く人にも連帯債務は残ってしまいます。
そこで不動産に住む人にローンを一本化することで、借金が0になるだけで無く、購入した不動産の持分も単独名義にすることが出来ます。
この共有名義から単独名義にするって事が重要でして
もし、離婚時に何もせずにペアローンのままだと、仮にローンを完済したとしても不動産の持分が離婚した相手が持っていると言うことで、売却することすら出来なくなってしまいます。
持分が99%旦那・1%が奥さんでも旦那は奥さんの許可を得ないと売却することが出来ません。
綺麗さっぱり離婚するには、不動産の持分もローンを背負う方に移行させるべきです。
尚、収入合算の場合は持分は主たる債務者である方が100%保有しておりますが、主たる債務者がローンの支払いをしないと、連帯保証人に返済の請求が来てしまいます。
何も知らず安易にペアローンを一本化した際の贈与税のトラブルをご紹介します。
安易なペアローン一本化は絶対NG!贈与税が掛かる2つのパターン。
持分を変更せずに、収入ある方に一本化。借金分返済して貰う=お金を貰った事で贈与税が発生。
ペアローンを組む際は、借入れ額に対して持分を所有することになります。
3,000万の物件を2,000万の借入れと1,000万の借入れのペアローンの持分は、2/3,1/3で保有する事になります。
仮に2,000万(旦那)のローンを3,000万円にする一本化(1,000万(奥様)の借金を消す)を行った場合、持分を無視して借り換えしてしまうと、一本化でローンが消えた債務者が、1,000万円を貰ったと言う事と同じ事になるので、1,000万円に対して贈与税が発生します。
初めて家を購入する人で、持分は持つけど、ローンは組まないっていうのも同じですよ。
不動産持分のせいで贈与税のリスクを知らない人がかなり多い。(知っている人はかなり少ない)
もしペアローンを一本化させるリスクを何も知らない方だと、借入れした銀行に相談をせずに、借り換え先の銀行にペアローンを一本化する審査をしてしまう方もおります。
その借り換え先の銀行も、不動産持分を変更せずにペアローンを一本化すると、贈与税が発生する事を知っていても、「借り換えを取りたい!」もしくは借り換え者本人の問題なので、あえて教えないって場合もあるようです。
こんな状態で、上記のローンの一本化を行ってしまった場合どうなるのでしょうか?
1,000万の借金が消えた奥さんに対して、贈与税が231万円も請求されるのです。
やばくないですか?200万越えの贈与税が請求されるんですよ。
夫婦間の1,000万円の贈与税の計算式
1,000万円ー110万(暦年課税)=890万円が贈与税の対象。
600万以上、1,000万円以下の贈与税の場合の税率は40%ー控除額125万円
890万✕40%ー125万=231万円
夫婦間で住宅ローンを一本化しただけですよ?
旦那が1,000万の残債を背負う分、奥さんが所有している1/3の持分を旦那に移転しないと、贈与税が請求されてしまうのです。(1,000万円で持分を売買する)
ペアローンを解消する方が持分を贈与。=ローン残債<<不動産持分であれば、不動産持分を貰った人に贈与税発生。
上記の計算で持分を移転しない場合は、贈与税が課税されてしまいます。
では、持分を移転させれば必ずしも贈与税が回避出来るかというとそんなことはありません。
今度は一本化して借金を背負う方が贈与税が発生する場合にあります。
仮に、購入した不動産の評価額(借り換え時)が4,000万円で、持分を上記同様に旦那2/3・奥さん1/3を保有し、1,000万円は既に支払い終え、旦那2,000万円・奥さん1,000万円のローンを旦那にローン一本化+持分を全て移転させたとします。
そうすると、旦那は1,000万の借金を背負いますが、同時に4,000万円の1/3である1,333万円分の不動産を貰えることになります。
あれ・・・ってカンの鋭い方なら気がついたのでは無いのでしょうか?
旦那が333万円分の奥さんから持分贈与されていることになります。333万円についても贈与税が発生するのです。
夫婦間の1,000万円の贈与税の計算式
333万円ー110万(暦年課税)=223万円が贈与税の対象。
200万以上、300万円以下の贈与税の場合の税率は15%ー控除額10万円
223万✕15%ー10万=23.45万円
約24万円の贈与税が発生するのです。
持分を渡せばOKって訳ではありません。
この場合は、1,333万円の内、1,000万分の持分を移転させなければ、旦那に贈与税が発生するわけです。(厳密に言えば)
贈与税を受けずにペアローンを解消して一本化するための2つの方法。
不動産の建物の評価額(公課証明書)と土地の路線価を確認すること。
ペアローンで持分を渡す際に贈与税を取られたくないのであれば、持分移転する不動産の価値を知ることは絶対条件になります。
不動産の価値は、販売されていた価格で評価されるわけではありません。相続時に利用する路線価格を利用します。
路線価とは
路線価は、市街地的形態を形成する地域の路線に面する宅地の、1m²当たりの評価額のこと。
仮に前面の道路が1㎡20万円と表示されている土地が100㎡あれば、その土地の路線価格は2,000万円って事になります。(単純計算で補正率抜き。)
建物の評価額は、毎年原価償却してますので、最新の公課証明書で建物の固定資産税評価額を見れば、建物の評価額は確認できます。
もし建物の評価額が500万円だった場合は、土地+建物で2500万円の資産って事になります。
1,000万円の借り換えでローン残高が消える代わりに、持分1/3(833万)を贈与であれば、ローンを一本化する人に対しては贈与税が発生しないわけです。
不動産の評価額を確認しておけば、贈与税のリスクをあらかじめ確認・回避することは可能です。
ココに注意
注意点は2つあります。税務署で確認してください。
☑建物の評価額は固定資産税評価額(市場価格の70%)なので、路線価格(80%)まで割り戻しする必要があるか?
☑833万円+110万円の946万円-1,000万円=56万円に対して、ローン残債が消えた方に対して贈与税が発生するか?
とにかくペアローンの一本化で贈与税回避はめちゃくちゃ難しいんです。
→住宅購入時に親から資金援助をしてもらう2つの注意点と2つのデメリット
結婚20年以上の夫婦であれば、配偶者の贈与の控除+暦年課税を利用する。(2110万まで非課税)
贈与税を回避する方法として、結婚から20年以上たった夫婦という条件は付きますが、夫婦間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除を使用することで、暦年課税と合せて最大2,110万円分が非課税になるのです。
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
出典:国税庁
熟年離婚などの卒婚などで、不動産の処分・ペアローンを一本化で大活躍しそうな方法です。
多くの場合は、この特例で贈与税を回避出来るのは間違えないでしょう。
但し、結婚から20年以上という厳しすぎるハードルが弱点です。(今のところこれ以外に配偶者の贈与税回避方が無い。)
まとめ:ペアローンの解消は必ず税務署で確認すること。
ココがポイント
☑ペアローンを一本化にするメリットは「一方の年収が減しても団体信用生命保険が最大限利用できる」「収入がある人の住宅ローン控除がフル活用できる。」「離婚時の名義変更・連帯債務解消」の3つ
☑安易なペアローンを一本化は厳禁!持分を移転させないペアローンの場合は、最悪200万円以上の贈与税が発生する事もある!逆に持分移転の不動産の価値が高ければ、債務を負う方に贈与税が発生する。
☑贈与税を回避するためには2つ。借り換え時の不動産の価値を必ず確認すると、配偶者への住居用の不動産贈与時の2,000万の非課税を利用する事。(結婚20年以上が条件)
私が安易にペアローンを勧めなかったのは、ペアローンを一本化(借り換え)がめちゃくちゃ難しいからだったんです。
知らない間に、税務署からお尋ね文で贈与税が発生していたって事が無いように、気をつけたい物です。
ペアローンでギリギリまで組むのであれば、審査金利の低いフラット35を利用して、年収の8倍のローンを組み、単独名義にした方がマシです。
同じ保証額で総額10万安くする火災保険のカラクリとは?
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